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忘れまい6・15

作・石黒 忠   (1963/6)

舞台上手 (樺美智子の大きな写真)杉の葉で飾られた祭壇。
虐殺された樺を象徴する 白いブラウス 白いスラックスの女性(わら人形)が横たわっている

舞台下手 ホリゾントにそって真紅の旗十数本

》回想する青年《
ぼくらのかかげる旗が
何故に血の色に輝くのだろうか
一九六〇年六月一五日
ぼくらはこの目で見たのだ
コバルト色の自治会旗を血の色に染めぬき
虐殺されていった一人の女子学生を
その血の乾かぬうちに
うなりをたてて警棒が ぼくらの頭上に打ち降ろされ
すべての旗が血まみれになっていったのを

A 『激突から数日後
   荒川放水路に投げ込まれた学生の死体が見つかった』
B 『七月には三池で大がかりな殺人が用意されていた』
C 『この年の十月 沼さんが刺殺された』

》おびえた声《(テープ)
にげろ にげろ にげろ にげろ にげろ にげろ
    職制の目だ! 配転だ! そんなにやっちゃ倒産だ
首切りだ! 賃下げだ! ロックアウトだ! にげろ
    にげろ にげろ にげろ にげろ 逃げてくれ組合がなくなればもともこもなくなるじゃないか!

A 『この傾斜する運動の底辺 押しつぶされそうな炭住に』
B 『今日も戸板にのせられくる事故死者』
C 『石川島じゃあな 爆発事故で人がたくさん死んだんだ 装甲車でポリ公がきて 騒ぎが起きないうちに非常態勢を整えるし 組合はなだめることしかやらないんだ 頭にきたよ』
D 『ニューヨークのど真ん中の新聞スト フランスをゆるがす炭坑スト イギリスの議会政治にけちをつけた失業者の国会突入デモ そして紙切れに書いたオレタチのゼネスト宣言』
A 『もっと協調しようと言う日経連』
B 『ビヤダルは舌なめずりをして目を細め オレタチの骨のずいまでしゃぶるつもりなのだ』
C 『札束と暴力がオレタチを狙っている だがオレタチは目の中に太陽を持っている』
全員(男)『オレタチは見抜き 闘いに立ちあがる』
全員(女)『わたしたちは歌い 勝利の確信を広めていく』

》闘う青年《
ぼくらはどんなときも耳をふさぎはしない
恐れず見つめる
闘うことは自分の内部に
殺されていたものをよみがえらせること
機械や事務机にしばりつけられていた ぼくらの青春
ぼくらの希望 ぼくらの愛 ぼくらの食欲
ぼくらの生きかたを
ぼくらは旗の色で
身体のただ中を流れる血の色で示すのだ
      合唱《俺は労働者だ》
》工場労働者《――明るくはりのある声――
〈ストライキがオレたちの学校さ〉山幸の仲間にそう言われたときめんくらってしまったけど オレタチの会社にいちばん最初に赤旗を をっ立てた日 やっと解ったんだ 山幸ゴムの連中にあいたくて電話したんだ 組合解散したんだってなあ 敗けるなよ オレタチも敗けない 全員 首!だけどやるんだ 何日も 何日も ピケをはってんだ 角材やハンマーをもってスキップがやってきた ヘルメットの凶犬も 白い指揮棒にあやつられてやってきた 朝日日産や 日本ロールにきた奴だ!

A 『そいつらは かきあつめられ』
B 『そいつらは とくべつなエサでかいならされ』
C 『そいつらは トラックにのせられ』
D 『そいつらは 尻込みすると半殺しにされ』
E 『そいつらは 人間の魂を引き抜かれ』
F 『そいつらは かみつくことを教えられる』
全員 『そいつらは 民主警察と言われ 人民の倖を踏みにじるのが任務なのだ』

》学生《
そのおびえた目を持った
かわいそうな犬たちは
目かくしされ 尻から火をつけられ
警棒をふりあげて突進してくるその犬たちの群の中に
樺さんを殺して平然としている奴がいる
奴らが ときにしおらしく見えるのは
号令がかかるまでの間じっと獣性を噛殺しているだけだ
スピッツは吠えたて
凶犬はのっそりやってきて噛みつくのだ!
(デモの隊列を作る)
A 『そいつがきたら がっちりとスクラムを組め!』
B 『前の列にいる仲間のベルトをつかめ』
C 『合図があるまで動きだすな』
D 『指揮以外は横にでるな』
全員 『こうしてオレタチは防衛する
だが オレタチは旗をまかない!
オレタチは尻込しない オレタチはプロレタリアの解放戦士だ!』
A 『樺さんの霊にオレタチは誓う』
B 『同志 橋本金次のように』
C 『三池で殺された久保さんのように』
D 『オレタチは闘い抜こう』
E 『安保と三池の鉄火の中で オレタチが知ったただ一つの言葉』
全員 『オレタチの闘いは 命がけだ
オレタチの獲得するのは 全世界だ
オレタチのホッパー を築け
オレタチのホッパー をバリケードにしよう』
第七旅団の歌 始めは低く だんだん力強く
 デモ隊、無言で力強く行進を開始する)
》デモ・スタイルのたくましい女性《
こうして わたしたちの同盟は 安保と三池の闘いの中で生まれ 新島と政暴法の鉄火の中できたえられました。そして後退戦を闘っている労働戦線の中で 誕生と共に額に刻まれた《街頭左翼》の光栄ある汚名を返上し 《組織者》として困難な道に自ら歩みだそうとしています。だが まだもどかしいほど微弱です
今日の集会に結集された青年労働者 学生のみなさん 今日の集会をステップにして 秋に予想される憲法調査会の答申案を粉砕する有効な闘いを組織しましょう 同盟はその最前列に立って闘います 職場へ! 生産点へ! 職場へ! 生産点へ! 憲法闘争を闘い抜く中心部隊の中に全国ゼネストへの中核体を建設するためあらん限りの情熱をそそぎます
みなさん!
一九六三年六月一五日 スクラムの腕に血をかよわせましょう すでに旗の色は同じ真紅に輝いているではありませんか わたしたちの赤いベルト 自己自身を武装力として組織した社会主義的青年たち この力は断じて 憲法改悪を許しません 樺さんの霊に心から誓いましょう!
六・一五忘れまい! 流血は不可避である
ファシズムの格子なき牢獄か 開放へのホッパーの構築か!
前進しよう! わがスクラムは不滅である!

デモ隊 あとから あとから登場 黙々と行進 これはナレーションの終りと同時に終る 舞台上手から横断幕


樺さんの死をのりこえて前進せよ! 未来はオレタチのものだ!
――六・一五実行委員会――

横断幕の前に歌唱指揮者 舞台両そでに旗手
指揮者あいさつ
みなさん わが同盟の隊列に参加され あるいは力強い連帯をもって共に進んでこられたみなさん それでは資本と権力の集中砲火をあび闘いつづける三池の労働者が 地の底の苦しい闘いの中から勝利の展望を持って力強く歌いあげた“人とし生きるため”をみなさんと一緒に歌いたいと思います 全員立ってスクラムを組んで下さい
全員合唱 “人とし生きるために
全員でスローガンのシュプレヒコール

インターの合唱のうちに デモ隊かけ声で退場

 忘れまい六・一五 *1

1 忘れまい六・一五
  若者の血の上に雨は降る
  一つの手はくだかれた
  すべての手を組ませるため
  忘れまいぬぐわれぬ血
  われらすべての夜明けまで
  手に手を渡せ さらにさらに固く
2 忘れまい六・一五
  若者の怒りに暗はながれ *1-2
  たちきられたその命は
  われらのうちによみがえれ
  忘れまいぬぐわれぬ血
  われらすべての夜明けまで
  手に手を渡せ さらにさらに固く

*1 作詞=八木柊一郎 作曲=林光 
*1-2 『うたのひろば2』(日音協)では「若者の怒りにやみはひかれ」


 第七旅団の歌 *2

1 オイラの生れはここではないが
  オイラの胸はともに高なる
  頭の上には同じ旗が
  容赦なくまた常に容赦求めず
  オイラは闘うために来たのだ
  第七旅団の行くところ
  ファシストは亡ぶ
  第七旅団の行くところ
  ファシストは亡ぶ

   進め 進め ブンブンブンブンブンブン
2 妻と老(おい)とを家に残して
  世界の果てからあつまり来しは
  一歩も退却するためならず
  オイラの数は少ないけれど
  オイラは闘うために来たのだ
  第七旅団の行くところ
  ファシストは亡ぶ
  第七旅団の行くところ
  ファシストは亡ぶ
   進め 進め ブンブンブンブンブンブン

青字部分はミスプリで原文にはないが石黒氏他に確認して補った。

*2 第七旅団のゆくところ――「第七旅団の歌」考――
  作詞=シーモノフ(土方敬太・村山知義共訳 宇野誠一郎補)
  作曲=宇野誠一郎 


 人とし生きるために *3

1 地の底から 地の底から
  怒りが燃えあがる
  この切羽で この切羽で *3-2
  なかまが息絶えた
  金のためには
  人の命もうばい去る
  奴らに怒りが燃える
2 血にまみれた 血にまみれた
  写真が落ちていた
  学生帽の ランドセルの
  顔が笑っていた
  この子にすべての
  のぞみたくして働いてた
  友の姿がうかぶ
3 命かけて 命かけて
  築きあげた職場
  この職場に たたかいの火を
  燃やしつづけよう
  人とし生きるため
  子等の未来のためにこそ
  搾取の鎖をたちきろう

 *3 作詞・作曲=佐藤広志
 *3-2 『うたのひろば1」(日音協)では、「この切羽で この職場で」


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